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「歌姫ってなんなん?」で注目の宇多田ヒカル、ライブでの取り組みが面白い

「歌姫ってなんなん?」で注目の宇多田ヒカル、ライブでの取り組みが面白い

 

SNS上で「歌姫ってなんなん」とつぶやいたことで脚光を浴びている宇多田ヒカル。昨年11月に、国内では12年ぶりに全国ツアーが行われたのをご存じだろうか。

宇多田ヒカルが「人間活動」なる休業期間を経て復帰後初のライブとなり、ファンとしては待ちに待った全国ツアーだった。

注目してほしいのは、このライブにはとあるシステムが導入されたことだ。それは映像技術やライブの舞台装置ではない。

PS VR向けにライブ映像を配信

まずは、PlayStation 4、同VR向けにライブ映像を後日配信したことだ。「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018–“光”&“誓い”–VR」の中に収められている“光”を2018年12月25日より先行配信開始。

VRということはどういうことかというと、なんとライブのアングルを3つの距離や角度から選べるという。中には宇多田ヒカルが目の前に来るような視点もあるのだという。

「顔認証システム」では顔写真を登録する

もう一つが「顔認証システム」である。これはチケット申し込み時点で申し込み者が自身の顔写真を登録し、その顔の人、つまり正真正銘の本人しか入場できないというものである。

一人2枚まで申し込めるが、同伴者も顔写真、氏名、メールアドレスの登録が必要なため、隣の席に座れるというだけで自分で申し込むのと手間は変わらない。

つまり、チケットを他人に転売することができない。初めから転売目的でチケットを大量購入しチケットサイトやオークションサイトで売りさばく人たち、いわゆる転売ヤーの購入を防止する効果があるといえる。

そういう意味では大きなメリットがあるが、一方でデメリットもある。

友人だろうと家族だろうと、余命いくばくもなく冥土のみやげに宇多田ヒカルが見たくてたまらないお祖父ちゃんだろうとチケットを譲ることは許されず、登録した顔写真の人しか入場ができないのだ。

プレミアムチケットの転売を阻止

宇多田ヒカルのライブといえば、販売開始から数分で完売、オークションサイトでは10万を超える価格でも取引されるなど、プラチナチケットとの呼び声高い入手困難なチケットである。ましては12年ぶりともなれば熱は相当なものになる。

しかし今回、転売ヤーを完全排除し、また別名義を利用して一人が何口も応募することも禁止したため(顔認証システムのため名義が別でも顔が同じだとはじかれる)、倍率は相当下がったのではないだろうか。

この顔認証システムにはNECの技術が使われており、導入は実はももクロ(ももいろクローバーZ)が初である。NECというとおじさん世代にはパソコンメーカーという認識かもしれないが、今や顔認証システム世界一で認証精度99.2%を誇るという。

顔認証システムにおける賛否

画期的なシステムかと思いきや、経済系のニュースサイトでのコメントは冷ややかなものばかりが目立った。

「転売ヤーが儲けるのが気に入らないなら、公式リセールの場を作ればいいだけ」
「ダイナミックプライシングやれば適正価格になって転売ヤーが入る余地がなくなる。そもそも需要と供給が合ってないから転売ヤーが現れる」

 

……違う……違う! 違ぁぁう!!

 

なにやら小難しい経済用語を駆使して批評しているが、宇多田ヒカルが転売ヤーが儲けるのが気に入らないとか、転売利益が惜しいとか、そういうことが目的でこのシステムを導入したと思っているのか賢い人々よ!

違うだろう、彼女の、というか運営側の意図はただ純粋に「一人でも多くのファンに、負担なくライブに来て欲しい」これだけである。

ほとんどの参加者が転売ヤーに何万も払ってライブに来るとか、大金払える一部のセレブが何枚もチケットをゲットして全公演行っちゃうとか、そういうんじゃなく、一人一回だけ! 一人でも多く! お値段10,800円ポッキリ! これがやりたかったんだろう。

その精神は経済活動というよりむしろ行政サービス……に近い?

そう、宇多田ヒカルはもはや金儲けではなく、ファンサービスそのためだけにコンサートを行っているのである。

でなければ、そもそもチケット代をもっと高額に設定しているはずである。

また、1枚10800円で適正価格とするならば、宇多田ヒカルのファンの数からするとディズニーランドよろしく365日公演でもするしかない。

当たり前だが、海外在住のしかも幼い子どもを持ったシングルマザーシンガーにそんなことは不可能だ。

ファン層を考えたもう一つのサービス「託児所」

また、宇多田のファンへの愛を裏付ける確たる証拠がもう一つある。今回のコンサートではもう一つ、画期的なサービスが導入されていた。

それは「託児サービス」である。

参加者が1人につき4人まで(子だくさん!)、子どもを預かってもらえるというサービスである。しかも無料!

このサービス、当然ながら運営側にとっては何の得にもならず、ウン千万の経費がかかるだけのサービスである。もちろんそんなサービスなくてもチケットは完売するので、客寄せ目的では全くない。

しかし、観客としてみれば夜の時間帯に子どもを預けるというのは大変困難である。そもそも夜間対応している保育所は多くはなく、あったとしても極めて高額である。

子どもを預けられる人がいない場合、自分の娯楽のためのライブに、そこまでお金をかけて、子どもに負担をかけて……? と悩む子持ちのファンの背中を力強く押してくれるサービスなわけである。

自身も3歳の子どもの育児中である宇多田の、さすがの気遣いというべきだろう。

以上の通り、この度のコンサートツアーはただただ宇多田のファンへのサービスであるということがお分かりいただけただろうか。

顔認証システムの良い点・悪い点

もちろん顔認証システムにはデメリットも多い。

・申し込みに手間がかかる

・キャンセル→順番待ちのシステムはあるが、公演数日前に締め切るため急病等の直前キャンセルはチケットが無駄になる

・あらかじめ同伴者も登録が必要なため、「チケットあるからよかったら一緒に行かない?」ができない

・デジタルチケット化と、申し込みがネット経由のみのため、ガラケーユーザーやネット環境がない人は完全シャットアウト

これらのデメリットもふまえて、今回の公演は試験的な意味もあっただろう。

事実、煩雑な申込み手順のせいでチケット完売ができなかった場合を恐れてか、申し込み者は公演日の第三希望まで登録するようになっていた。

しかしアンケートやTwitter上の報告を筆者が調べた範囲では、申し込み者のうち少なくとも8~9割の人がチケットに当選することができており、システム導入の効果はあったといえそうだ。

肝心の顔認証のチェックそのものもスムーズに行われて待ち時間もなく、評判は上々だ。

異例づくめの公演となった「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」。

宇多田ヒカルは今後も精力的にライブ活動を続けていきたいとコメントしており、ファンの期待は高まるばかりだ。

それにしても、会場前にはちゃんといるんだ「チケット買うよ~」のおじさんが。寒空の下、誰も足を止めないのを不思議に思わないのか……ホームページ見ようよ!

この記事を書いた人

ZOOREL編集部
エレファントストーンで開催される月1会議でのプレゼンテーションや、社内研修をもとに記事を作成、更新します。

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