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セリフ体が絶滅する?
ブランドロゴに見るフォントの潮流

セリフ体が絶滅する? ブランドロゴに見るフォントの潮流

動画や映像を作る際にとても大事なのがフォント選びだろう。

フォント選びについては以前「【フォントの選び方】重視するポイントは読みやすさ?視認性?」でも取り上げたように、セリフ体とサンセリフ体がある。

セリフ体は「格調が高い」「高級」「伝統的な」といったイメージがもたれやすい。古代イタリアの石刻文字が起源ともいわれており、長文を読みやすいという特徴がある。英字新聞などはセリフ体で構成されていることが多い。和文フォントでは明朝体がこれにあたる。

一方で、サンセリフ体は視認性に長けている。「モダン」「カジュアル」「フラット」「シンプル」といったイメージがもたれやすい。例えば、Appleで使用されることが多いのはサンセリフ体で、Myriad Proも一時期採用されていた。和文フォントではゴシック体がサンセリフ体と同等にあたる。

セリフ体が絶滅の危機!何故?

これまでファッションブランドのロゴといえば歴史のあるブランドほどセリフ体のものが多かったのだが、ここ数年で多くのブランドがサンセリフ体のそれも似たようなフォントに鞍替えをしていることを『The Bussiness of Fashion』が指摘している。

その理由のひとつが「オンライン」であるのだという。ジバンシィの元デザイナーで現在はバーバリーのデザイナーを務めるリカルド・ティッシは「現代的効用」とサンセリフ体を支持。バーバリーのロゴはデザイナーのピーター・サヴィルにより一新されている。

引用:https://jp.burberry.com/c/our-history/

バーバリー新ロゴ

『The Bussiness of Fashion』は「清潔で読みやすくさまざまなメディアに対応できる。特にオンラインで機能する」と記載している。

また、オフホワイトのデザイナーで現在ルイ・ヴィトンのデザイナーを務めるヴァージル・アブローは「新しいルネッサンスの夜明け」とこうした流れを評価する。

黒人デザイナーであるヴァージル・アブローは「インターネット、新しいメディアの登場で、これまでの歴史を再考されている」と述べている。セリフ体は「権威主義」「父親が家で一番偉かった時代」のもので、人種差別的だという見方もあるのだという。

サンセリフ体絶頂期で抱えるリスク

こうした流れに警笛を鳴らす声もある。それは、ファッションブランドというのは個性が大事なわけで、その中で同一性を持ったようなロゴばかりが並ぶのはいかがなものだろうか?という反論だ。

引用:https://twitter.com/BoF/status/1105484356917886978?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1105484356917886978%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fzoorel.elephantstone.net%2Farchive%2F1229%2F

実際に上記のロゴ一覧を見てみると、バーバリーもサンローランもバルマンもみな似たようなフォントであるように見える。

日本でロゴを発注すると、行間や文字の微調整を行ったり、独自のフォントにアレンジして使ったりする場合が多い。しかし、海外ではすでに「発表されているフォントは完成されたもの」であり、ストレートに選んだフォントを使うことも多いため、より似たようなロゴが並んでいる事態が起きていると推測される。

ブランドの海外展開を踏まえてこうしたロゴに至ったというのがその見方であるが、確かに没個性と見られてもおかしくはない。

動画時代に見るサンセリフ体という必然の選択

ちなみにオンライン、新しいメディアというのは要するに動画、インターネットメディアなどを指すと思われる。実際に携帯電話のようなガジェットからこうした動画まで、21世紀の製品にサンセリフ体が選ばれてきたのは必然であった。

携帯電話では小さな画面の中で視認性が求めれたし、YouTubeでは解像度の関係でセリフ体のひげ部分などはつぶれて消えてしまいやすかった。それらは現在の高画質動画では見られるようになってきているが、例えば人気のYouTuberが動画のサムネイルにサンセリフ体や明朝体を使用しているのを見たことがあるだろうか?

また、動画のテロップ、映画の字幕なども細い文字は映像と同化しやすかったりするために、太く力強いフォントが求められた。その結果、サンセリフ体(ゴシック体)などが人気になったのも当然の流れであろう。(ちなみにエレファントストーンの会社ロゴもサンセリフ体である)。

こうしたフォントの潮流の流れはいつの時代も起こることだ。だが、ファッションブランドまでもがオンラインへ対応、そして世界へ打ってでるために相次いでサンセリフ体を選んでいるというのは一抹の寂しさもある。

やはり古い人間だからか、高級なブランドはブティックや高級な路面店で買うものという概念があり、そこにはセリフ体が似合うと思うからである。またいつの日か、セリフ体をインターネット時代に合わせてうまく活用するデザイナーが登場してくれることを切に願いたい。

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この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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