MARKETING

中国の社会問題を深掘りして話題になった「Eコマースプロモーション」の一例

中国の社会問題を深掘りして話題になった「Eコマースプロモーション」の一例

エレファントストーンでディレクターをしている金です。

今の中国では、インターネットと金融業の連携は一番注目すべきビジネスモデルとも言えるだろう。それに基づいて経済はハイスピードで発展しており、若者たちの間では『成功しなくちゃ』という焦りが広がっている。この焦りをビジネスプロモーションのヒントにして、うまくいった事例がある。

中国で話題になった「京東小金庫」のPV

Eコマースがハイスピードで発展している中国では、オンライン支払いやオンライン金融などのサービスは既に国民の日常に馴染んでいて、形のない商品としてプロモーションが求められている。

ただし、それに対するプロモーションの手法はまだ定型化されておらず、成功事例もない中で、いかにして主な使用者になっている若者たちの注目を集めるかが課題になっている。

中国EC(Eコマース)第2位の『京東商城(JD.com)』は、2018年に『京東小金庫』というオンライン理財サービスを発表した。

それに伴い公開したPVは、詩的なナレーションと独特な映像表現で大勢の若者の注目を集め、話題になり、いいプロモーションになったと思う。注目を集められた原因は、現在の中国社会を深掘りしたからだと考えられる。

実際の映像がこちら。

”焼酎をぐっと飲み干す必要はない”
”音楽を諦める必要はない”
”いつも笑顔でいなくてもいい”
”大きな部屋を持たなくてもいい”
”大きな会社で夢を追う必要はない”
”自分を変えなくたっていい”
”すべての責任を背負わなくていい”
”あなたは成功しなくてもいいんだ”

(これらは一部だが)日本語にするとこのようなメッセージが含まれている。

このPVが話題になった理由

伝統的な出世文化

『京東小金庫』のPVのタイトルは『你不必成功』(=あなたは成功しなくてもいいんだ)である。このタイトルは今の中国の若者たちにとっては、非常に刺激的な言葉と思われる。

昔からずっと儒家の出世文化に影響を受け続け、中国社会では、出世することが人間の価値を判断する基準になっている。出世することは個人だけではなく、家族の栄光にも繋がっているので、中国人にとっては非常に大事なことと言えるだろう。

若者の「早く成功しなきゃ」という焦り

中国は改革開放してからの40年間で、経済が急速に発展し、物質社会になってきた。若者たちの多くは”自分たちが頑張れば自分の価値を高められるいい時代に生まれた”と思いつつ、人材競争の残酷化や、社会のハイスピード発展により、「早く成功しなきゃ」というストレスを感じている。

そうした中でこのPVは、『あなたは成功しなくてもいいんだ』というタイトルとともに、今の中国の若者が直面している大変な生活の現状、様々な社会問題を提起し、それは本当に合理的かどうかという疑問を投げかけた。

若者たちに、「一体どういう生活を送りたいのか」を改めて考えさせたのが今回のプロモーションの最も成功したポイントだと思われる。

またこのPVは、生活の中でよくみるシーンと主人公の背中姿を見せ、見る側の共感を求めていた。

流行している「軟広告」

理想的な生活には不可欠な理財する能力は「京東小金庫」が提供している理財サービスには間接的な繋がりがあり、プロモーションの効果があるが、無理やりプロモーションされている感じはあまりしない。こうした見る側の自主判断を尊重している「軟広告」は中国で流行っている。

”社会”と”インターネット”のつながりはプロモーションのヒント

「京東小金庫」のPVは内容と形式の組み合わせで、いいプロモーション効果が発揮できたと思われる。

今の中国を理解しようとするなら、社会とインターネット産業のつながりを理解しないといけない。インターネットはこの国のビジネスモデル、流行文化から、国民の生活慣習、考え方までに深刻な影響を与えている。

それよりに起こっている社会思想の潮流もプロモーションのヒントになるので、インターネットの発展によって生まれた空前の市場需要も、広告業界の注目すべきところだと思う。

この記事を書いた人

金鵬
エレファントストーンのディレクター。1991年、中国ハルピン市生まれ。

金鵬の書いた記事一覧へ

タグ

RELATED ARTICLES 関連記事