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「シネマコンサート」映画×クラシックは新しい映像表現の形?

「シネマコンサート」映画×クラシックは新しい映像表現の形?

8月16日、17日に初台のオペラシティで機動戦士ガンダムの「シネマコンサート」が行われた。シネマコンサートという言葉を聞きなれない読者は多いだろう。私もその1人だ。

公式によると

シネマ・コンサートは、映画のセリフや効果音はそのままに、劇中で流れる音楽パートを上映にあわせてフルオーケストラが生演奏する、新感覚の複合型エンタテインメント・コンサートです。映像・音楽の迫力は、臨場感を増幅させ、記憶に残る名シーン・登場キャラクターをより鮮明に感じることができるでしょう。

と記載されている。

とはいえ、この言葉だけでも私は理解が及ばず。そして同じく観衆の話を聞いていても、みんな同じ感想であった。「シネマコンサート」とは何だろうか解説していこう。

映画の音楽パートがクラシック

今回のイベントは機動戦士ガンダム40周年記念で行われた。『劇場版 機動戦士ガンダム』は1979年の作品で今から40年前に公開され、人気を博し社会現象を巻き起こした。

ところが、劇場版機動戦士ガンダムは3部作で、合計上映時間は6時間を優に超える。つまり、筆者が考えたのはこうだ。今回演奏を担当した東京フィルハーモニー交響楽団がガンダムの音楽を演奏し、そこに映画の名場面が登場する。つまり、コンサートの“片手間”に映画の名シーンが抜粋されて流れるというものだ。

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ところがこれは間違いであった。

実際は映画が最初から最後まで流れる(今回でいえば3部作のうち1作目が上映された)。効果音とセリフはオリジナルの映画のものを使用している。BGMが必要になると、そこだけフィルハーモニー交響楽団がいきなり演奏をし始めるのだ。

想像以上に臨場感がすごい。今まで聞き慣れていた音楽の良さを再発見する。そもそも、映画音楽のBGMは決して再現しやすいものばかりでないはずだが、あんな音やこんな音も再現されている。恐るべしフィルハーモニー交響楽団。

私が観覧した金曜日は、富野由悠季監督が登場。曰く「セリフが若干聞き取りづらい。その分、オケの音を聞いてくれ」とのことで、確かに臨場感がある演奏でセリフは若干聞こえなくなるが、その程度は問題がない。(そもそもみんな何度も見返した経験があるオタクが見に来ているわけだし)

ちなみにガンダムといえば歌も売りの一つ。今回もやしきたかじん氏の『砂の十字架』が流れたが、これも映画から抜き出したのではなくキングレコードにあった音源を使用し、そこにオケの演奏をのせていた。

惜しむらくは、今回は劇場版Iの内容で終わりだったこと。「これから!!」というところで終わってしまうので「哀戦士」「めぐりあい」といった曲を聞きたかった観衆は次回以降にお預けになった。

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(会場には劇場版当時の富野監督らの映像も流されていた。本人はちょっと恥ずかしそうであった)

ガンダムはテレビ版が打ち切りになったが、その後映画が大ブレイクした。富野監督は「つぎはぎ映画だもの」といつもの富野節で会場を沸かせたが、同様に40年の月日をファンが盛り上げたことに感謝の意を述べていた。

スター・ウォーズにオードリー・ヘプバーンまで

この「シネマコンサート」、何もガンダムに限った話ではない。数年前から日本でも本格的に興行がスタートし、今や往年の名作をオーケーストラの演奏とともに楽しもうと、チケットぴあでは一つのカテゴリーにまでなっている。

ぴあによると

不朽の名作から記憶に新しい近年の名作まで、ファンにはたまらない劇中の音楽をライブ演奏。映画上映とオーケストラの生演奏が楽しめるシネマコンサートも人気上昇中!

とのことで、『ティファニーで朝食を』『ライオンキング』『スターウォーズ』『砂の器』などジャンルも内容も多岐にわたる。

『ディズニー・オン・クラシック』のように、いくつかの作品から良い場面を取り出したものもあれば、スターウォーズのように作品の中から特定のものを選び、それの映画音楽をクラシックで再現するというものもある。

映画というと最近はただ上映するだけでなく、IMAXのように3D、効果音、動き(雨や風)を再現することで臨場感を増す取り組みが行われている。あれはあれで素晴らしい取り組みだが、この「シネマコンサート」というスタイルは映画×クラシック音楽という新しい映像表現の形といえる。

特に過去の名作が再利用可能なため、『ハリーポッター』『スターウォーズ』といったシリーズものにうってつけ。1日目は「●●」、2日目は「××」とファンも2日連続で鑑賞できるなど、どっぷりとその世界につかることができる。

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この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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