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VR2.0の世界へ
今だから振り返る「VR」の歴史

VR2.0の世界へ 今だから振り返る「VR」の歴史

VR元年といわれた2016年以降、アトラクションとしてVRは人気を博してきましたが、ここ1年弱の間に動画共有サイトで「VR動画」の人気がじわじわと高まりつつあるようです。

転機となったのは、2015年3月から『YouTube』で「360度動画」のアップロードが可能になったことです。そこから、クリエイターによって投稿された「VR動画」が徐々にレベルアップしていき、今では多くのVR動画が視聴されています。

特にホラー(恐怖体験)とVR動画の相性は実に素晴らしく、ホラー映画が大好きな私もさまざまなコンテンツを楽しんでいたのですが、あるとき観ていてハッと気づいたのです。

「VR」が生まれたのっていつだっけ?
「360度動画」と「VR動画」の違いってなんだ?

ディスプレイを前に、何も答えられない私がいました。

いまさらではありますが、その問いを考えるにあたり、今回はVRの歩んできた道のりについていま一度振り返っていきたいと思います。

誕生から半世紀。VR50年の歴史とは?

世界初のVRシステム「Sword of Damocles(ダモレスクの剣)」

「VR」とは、「Virtual Reality」の略語で、日本語でいうところの「仮想現実」にあたります。

1960年代後半、インターネットの先駆者であり「CGの父」と呼ばれるサザーランド博士が、史上初となるVRヘッドマウントディスプレイシステム、通称「Sword of Damocles(ダモレスクの剣)」を開発しました。中二病心をくすぐるような素晴らしいネーミングセンスです。

見た目はなんかの剣みたい。

動画を確認すると、天井から吊り下げられたヘッドマウントディスプレイを装着することによって、目の前に表示される3DCGの映像と現実の映像が重なり合って見えるシステムになっているようです。

ヘッドマウントディスプレイの外見は現在のVRヘッドセットに似てなくもないですが、「品質と価格」の面ではさすがに大きな違いがあります。この「Sword of Damocles」のお値段はなんと一台、数百万円以上。

現在は、数万円も出せばそれよりもはるかに性能の良いヘッドセットを購入することができます。もちろん天井からも吊り下がっていません。

もっとも、「Oculus Rift」や「PlayStation VR」といった現在最新の一般ユーザー向けヘッドセットも、基本的な仕組みはこの「Sword of Damocles」をベースとしているようです。

1990年に起こった第一次VRブーム

1989年に、ヘッドマウントディスプレイ・手袋型デバイス・フィードバック付きスーツという三点セット(重さ2.4kg、値段9400ドル)のVRシステム「The Eyephones」が、米VPLリサーチ社から企業向けに発売されています。

アイフォンズといってもあのiPhoneとはもちろん全く関係がありません。

このとき、「VRの父」とも呼ばれるVPL社の創業者ジャロン・ラニアーが、製品のキャッチコピーとして命名したのが「Virtual Reality」の語です。

彼の革新的な製品は大きな話題を呼び、その略語である「VR(仮想現実)」の言葉と概念も急速に普及していきました。そう1990年に第一次ブームがやってきたのです。

2年後の1991年には、Appleが現在の360度パノラマ画像や360度ムービーの先駆けともいえるシステム「QuickTime VR」をリリース。遊園地やテーマパークといった企業向けだけではなく、家庭用機器としてもVRシステムが提供されるようになり、世界的な第一次VRブームが起きました。この頃、筆者は小中学生でしたが、都内のテーマパークで「VR(仮想現実)」を実際に体験したのを覚えています。

しかしながら、高額かつ大掛かりな設備が必要なことがネックとなり、ブームは沈静化。次第にVRは表舞台から姿を消していくことになります。

Oculus買収から現在のVRブームへ

VR市場はなかなか活気づかずにいたなか、現在のVRブームのきっかけとなったのは、やはり2014年に起こったFacebookによるOculus VR社の買収劇でしょう。

誰もが知る世界的な大企業が、創業わずか2年足らずのベンチャー企業を20億ドル(2,230億円)で買収したニュースは瞬く間に世界をかけめぐりました。

2012年の「Oculus Rift」発表で火が付きはじめていた「VR(仮想現実)」の技術革新に大きな注目が集まり、再び脚光を浴びることとなったのです。

現在はFacebookだけではなく、ソニーやHTS、サムスンといった大手メーカーもVR市場に参入しています。といいますか、ソニーはVRという言葉が広まる前からヘッドマウントディスプレイなどをひっそり一般向けに作っていたのです。友達の家で見たこともあるのですが、かっこよくて素晴らしい世界観でした。

ただしそれは、VRというよりはヘッドマウントディスプレイを通じてテレビやゲームをやるようなことが主眼の商品でした。つまり、テレビの代わりにゴーグルを使おうという発想でしょうか。とすると、高い割に長時間の使用だと目が疲れてしまう、単純に飽きてしまうのがネックと当時感じました。

VR第0世代ともいえる「Sword of Damocles」の誕生から50年近い時間が経過し、VR技術は第二世代とも呼ばれる新しいフェーズに移行しており、ヘッドセットをはじめとするVRデバイスの分野で各社がシェア率を競い合っています。

現行システムでは、装着したヘッドマウントディスプレイから映像が提示され、それが頭の向きに合わせて変化することで視覚体験を作り出すものがスタンダードですが、近い将来は電気信号で脳に直接刺激を与えることで、視覚だけでなく嗅覚、触覚、味覚、聴覚といった五感情報のすべてを知覚することができるようになるだろうと予測されています。

まるでSFの世界ですが、それが現実になる日がすぐそこまで来ているようです。

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この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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